休みの日、ずっと海を眺めていました。 江ノ島から少し離れた砂浜で見晴らしのよい場所があり、そこでずっと動かずにいたのです。 海は季節とともに、時間とともに表情を変えます。静まり返った朝の海、朱に染まった夕べの海、波が高く荒れる海、べた凪。潮の満ち引き、空を流れる雲と日の光で、海は透明色を現します。
湘南海岸は忙しい海で、一日中いろいろな人が行き交います。犬の散歩をする人、砂浜をランニングする人、サーファー、自転車で旅する人、何やら手漕ぎボートで海へ繰り出す人。時折、サーフへ立ちこんでルアーをキャストする人がいました。「釣れましたか?」「あーぜんぜんです」。
人は誰でも、好きなもの、なつかし場所があります。 ジャイアンツが大好き、故郷の川が懐かしい、電車を見ると興奮する鉄っちゃん、モンタナの魅力にはまった。僕の場合、とにかく川と海、魚が好き。一般の人には到底理解できない心境ですが、本人も説明できない。理屈ではないのです。
なつかしいといえば、釣魚会をなつかしがる卒業生の皆さまの想いも、ジャイアンツファンに負けていません。 金沢八景で先日行われたKFC卒業生の集い、アジ・ハゼ釣り・バーベキュー大会では、その元気に圧倒されました。 義塾の150年にはまだおよびませんが、釣魚会も50年近い歳月を重ねました。KFC卒業生の皆さまにとっても、この釣魚会は心のふるさととなっているのでしょうか。
今は学生の釣魚会メンバーも、いずれそうなることができるのでしょうか。少なくとも、現役のメンバーには、熱烈なファンでいてほしいとは、必ずしも思いません。ひとり一人が、心の奥底で釣魚会のよき思い出を持っている。時々それをそっと取り出して懐かしく思う。そうあってほしい。きっと、そのような釣魚会であれば、これから50年、60年と長く続いていくと思うのです。
他大学との交流、学生釣魚連盟への参加、釣り大会への参戦。そうしたにぎやかなイベントも近頃は増えてきました。 ただ、釣りで最も大切なことの一つは「おだやかになることを学ぶ」謙虚な姿勢。それを忘れずにいたいと思います。
研究室で本に囲まれて過ごす、忙しくもしあわせな日々が続いています。ただ窓から、川も海も見えないのが残念です。SFCにある鴨池を大海原に見立て、ルアーやフライを泳がせてみよう(本当にやってしまうと退学になってしまうのでしていません)。そんな夢を見ています。
柴 光則