海ボート 神奈川県 逗子 

Angler 多田さん 飯田さん 中川さん 松井

10月も最後と迫った31日、僕たち釣魚会は逗子へボート釣行に赴いた。中川さんのメールでは逗子駅に6時40分集合のため、蒲田在住の僕は朝四時半には起きて朝五時に出なければならず、前日は早めに就寝しなければならなかったのだが、久しぶりの海で釣りができることに興奮したせいかなかなか寝付けず(どこかで眠眠打破を拾ってのんでしまったのではないかというぐらい)、大量の目覚まし時計を四時半に設置してなんとか眠りにつき、目覚ましの爆音でかろうじて目覚め(4時44分起床、キタマクラ爆釣の悪寒w)、釣り道具を振り回しながらなんとか電車に乗ることができた。やはりこの時間は人が少ないなー、と寝ぼけながら思っていると、何やら釣り竿らしきものを持ったおっちゃん達が逗子に近づくに比例して増えている。すると中川さんからメールがとどいた「電車の中釣り人大杉w 同じ車両に8人」。・・・スれなきゃいいなあ。 逗子駅につくと中川さんがすでに到着しており、後から多田さん、飯田さんが集まり、時間どおりのバスで葉山のボート乗り場へと向かった。道中で釣り具を揃えるために地元の釣り具屋さんに寄り、リールを忘れた?飯田さんとラインが足りなかった僕は安いスピニングリールを購入し、意気揚々とボート乗り場へ行くと予想どおり釣り人だらけ・・・。内心オワターwww。気をとりなおしてコマセ用のロッドを借り、グッとパーで班決めを行う。結果飯田さん・多田さん班と中川さん・松井班に決まり、ボートに乗り込んだ。一度ここに下見に来てた中川さんは漕ぐのがうまく、沖まで引っ張ってってもらうためのボートの列まですぐ到着したが、一方の班では飯田さんが漕ぐのに苦戦しており、多田さんにチェンジして漕ぐも僕らの列の出発に間に合わず、僕らは先に沖へと向かうことになった。

沖に着くと、さっそくアンカーをおろし、釣り支度を始める。ソウマガツオやイナダやサバなどの中層の魚を狙うためのコマセ釣りと、底にいるカワハギを主に狙うために針三つと重りをつけた五目釣りを各々支度し、さっそく釣りを開始した。僕は五目釣りからはじめ、中川さんはコマセ釣りからはじめた。どちらも特殊な技術は必要なく、ただヒットを待つのみ。しばらくしても特にヒットがなかったため、僕は餌となる小エビの交換をするために巻き上げると、なんと10cmほどのカサゴとベラが針に食らいついていた!あまりにも引きが弱くて気付かなかったようだ。一方の中川さんもすぐにヒットした!コマセのロッドが大きくしなり、引きの強さがみれてとれる。コイ釣りと違って海釣りの場合は縦横底方向に360度魚が泳ぎ回るので、ラインが船のアンカーに絡まったりして切れたりめんどくさいことになったりするので注意が必要だ。一〜二分の戦い後、釣れ上がったのはソウマガツオだった。ソウマガツオ・・・なんてカワイイんだ!大きく開いた赤子のようなつぶらな瞳、太陽光に照らされた白銀の体、尾びれに近づくほど細くなる二次関数の放物線を思わせるようなシンメトリーな引き締まったフォルム、萌え〜!と一人で萌えていると、中川さんがあたかも決まり事かのようにヘラを右手に持ちだした。なっ、中川さん一体何を・・・???すると中川さんは顔色を変えず、そのヘラをソウマガツオのエラの中へぶち込んだ。 !!!??? 暴れだすソウマを押さえつけるかのように中川さんはヘラでエラをえぐる。鮮血があふれだした。つぶらなソウマの瞳から消える生気。仕事を終えた中川さんからはあふれんばかりの笑顔。それは殺害というにはあまりにも日常的すぎた。速く、上手く、手際良く、それにテキパキすぎた。それはまさに作業だった。 中川さん「魚は血抜きしないと生臭くなっておいしくないからね〜。」 松井「て、抵抗ないんすか?・・・」 中川さん「やってれば慣れるよ〜。もう普通だね(笑)」

その後、中川さんのロッドが再びしなりまたしてもこれから自身に起こることを知らない無垢なソウマが釣れ上がった。中川さんの手がパブロフの犬のようにヘラを探し始めた。しかしヘラが見当たらない。どうやらボートが揺れて、置いておいたヘラがどこかにいってしまったようだ。ヘラを探すことをあきらめ行き場を失った中川さんの手はソウマの頭へと最短距離で移動し、その頭をわしづかみにした。なっ、中川さん今度は一体なっ、何を・・・???すると中川さんはさきほどと同じく顔色を変えず、ソウマの首?をへし折った!そして続けざまに首から内臓を取り出した!肉塊と化したソウマ・・・。それは魚というにはあまりにも不自然すぎた。頭がなく、内臓がなく、血がなく、それにおいしそうすぎた。それはまさにスーパーに売られているおいしいカツオだった。 中川さん「ヘラがなかったらこうやるんだよ。これが世に言うサバ折り〜」 松井「て、抵抗ないんすか?・・・」 中川さん「やってれば慣れるよ〜。もう普通だね(笑)」 僕のロッドはいつの間にかコマセ用へと変わっていた。何かに執りつかれたかのように僕はコマセ釣りを開始した。そして引き寄せられるようにソウマガツオが釣れ上がった。僕の右手には行方不明だったヘラがしっかり握られていた。視線の先の血抜き請負人の中川師範が静かに首を縦に振る。それを合図にあらゆる葛藤から解放された僕の右手は滑り込むようにソウマのエラへヘラを差し込んだ。血抜き未経験の僕の右手は本能の赴くままヘラを上下に動かした。暴れるカツオと僕の右手は一つになった。恍惚をうかべながらソウマは静かに昇天した。僕の右手は鮮血に染まっていた。天に召されたソウマを静かに中川さんが持参したクーラーボックスへと運び、最後までソウマと目を合わせながらクーラーボックスを閉じた。僕の血抜き初体験はこうして幕を閉じた。 中川師範「いい血抜きだったじゃないか。」 弟子松井「これが生き物から命をいただくということなんですね。俺最初中川師範のことただの殺戮マシーンの変態だと思ってました。でもそれが勘違いだってことがソウマと右手が一体になることで気付いたんです!」 中川師範「(キ、キモ・・・)よ、良かったじゃないか。一皮むけたな」 弟子松井「はい。こいつはおれの手で最高の料理にして見せます!」 中川師範「楽しみにしているぞ。あっ、料理Mixiにうpよろwww」 風で荒れていた逗子の海は静かになっていた。波は穏やかにうっていた。その波の音は天に召されたカツオたちへの鎮魂歌のように思えた。その歌はテストオワタな僕の心を優しく慰めてくれた。(おわり) (このカツオや中川さんの描写記述はほぼフィクションです。決して中川さんの人格を 貶めるために書いたものではありません。中川さんはとてつもなくいい人です。でもいきなりヘラぶち込んだときは気でも狂ったのかとおもいました(笑)。中川さん、男というより漢ね(笑)あと僕は変態じゃありません。) とまあ、なんやかんやカツオ釣れた釣れたワーイワーイ、一人暮らしの俺の食糧キターーーーとやってると、中川さんの携帯に着信が、どうやら相手は多田さん達らしい。 中川さん「どうやら多田君達のボート、アンカーきかなくて沖に流されてるらしいよ」 松井「えっ!?ヤバいじゃないですか!」

レポートのネタを作ってくれたことに感謝し、地平線の彼方へ消えた先輩方二人の冥福を祈りつつ、僕らはカワハギを狙いにアンカーを引き上げ、陸の方向へと目指したが、中川さんがいくら漕いでも漕いでも陸の風景は遠のくばかりだった。風が強くて進まないのだ。こりゃあ先輩たちが漂流するわけだ、と思っていると僕らもプチ漂流しそうだったので、陸に向かうのをあきらめアンカーを下すことにした。そろそろ昼飯時だったため、コンビニで買ったサンドウィッチを食べようとすると、自分の手のオキアミ臭さにびっくりした。中川さんいわくこの臭いはなかなかとれないらしい。中川さんの言うとおりおにぎりは買わなくて正解だった(笑)。釣りを再開していると、漂流していた先輩方がボート屋の人のボートに引っ張られてきて、僕たちと合流できた。ようやくみんなそろって釣りを始めることができた。 多田さん達のボートはアンカーが効かないので僕らのボートと連結して釣りをすることにした。(この結論に達するまでに、ブイにつなげて釣りをしたがボート屋に注意されてやむを得ずあきらめた。またアンカーを引き上げてボートを漕いでいるとほんとに漂流しそうになったため、頑張って陸に近づこうと頑張っていると知らないおっさん連中に「お前ら死にてーのか!?」的な罵声をあびつけられたり、漕ぐのをあきらめてボート屋に引っ張ってってもらったら「これで二回目ですよ。もっと気を付けてください!」と注意を受けて、かなり気分を害された。あの時の中川さんのしかめっ面は忘れられない(笑))四人みんなそれぞれ五目やコマセの釣りをしていると、五目ではオコゼやベラなどの外道たちばかり(だがキタマクラは結果一匹も釣れなかった、どうやら僕の朝の呪いは解けているらしい(笑))で、本命のカワハギは一向に釣れない。カワハギは餌をとるのが非常にうまく、つりあげるのはかなり難しい。あと、五目釣りは底に一度落とすので、落ちたらすぐに少し巻かないと、根掛かりしてしまう。先輩でそんなヘマをする人はいないが、僕は見事に地球を釣ってました(笑)。一方のコマセでも良く釣れるのだがソウマガツオばかりで、イナダやサバは上がらなかった。しかし、しばらくすると飯田さんがコマセでイナダを釣りあげた!

飯田さんを羨ましがっていると僕のロッドにも当たりが!は〜、またソウマかなと思っていたが、なんだか引きが少し違うような気がした。ソウマは縦横無尽に走り回るが、今回のはややおとなしい。ゆっくりあげてみると、海面から見える魚影が明らかにソウマと違ってやや白っぽい!イナダだ!てかイナダじゃなきゃヤダ!空気読めソウマ!声をあらげて魚をあげると、やっぱりイナダだ!

ソウマとは違い、ちょっとイカついやくざ面である。夜の道では会いたくない類の顔である(笑)。やったーブリの照り焼き食えるおー(イナダはこの姿から分かるようにブリの幼魚であり、イナダ、ワラサ、ブリと名前を変える出世魚である。くわしくは中川さんまで(笑))。そうすると午前からのソウマラッシュが嘘のように、今度は僕も先輩方もみんなコマセでメジナがヒットしだした!

これは黒目鯛でおなじみのおいしい魚のため、もちろん一人暮らしの僕の貴重な食糧になるはずだったが、中川さんの用意してくれていたクーラーボックスに入りきらず、またソウマやイナダと違って鱗があり調理が煩わしいので、あえなくリリースした。(実際、クーラーボックスの氷が解けてしまったので、すべてリリースしたんですがね(笑)) そうこうしているうちに時間になり、本日の釣りは色々トラブったものの、結構釣れたので楽しい一日だったという形で収竿となった。一匹も釣れず、やけくそでスケルトンGで行くという暴挙に出る必要がなくて良かった(笑)。陸に上がると、ボートの上で揺られていたせいか平衡感覚がとりづらかった。そのあと、バス停で自分の携帯がないことに気づき、海の藻屑と化していないことを祈りつつボート屋にいって、ライフセーバージャケットから携帯が出てきてくれたのは日ごろの行いが良いからだろう(異論は認める)。そのまま逗子駅へと流れ、駅前のマクドへと入り、軽く食べた後、解散となった。ぐったりと疲れたが、やはり釣りは楽しい。非日常的な風景や見知らぬ生物と出会い、自然を堪能するのは最高である。慶應に入れて、釣魚会に入れて良かったと心底思った。そんな余韻に浸りながら電車の中で英セミの般教の課題を思い出したときは、慶應に入った自分を呪った。



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