- 2015-09-25 (金) 1:13
- Fishing
晩夏は必ずしも釣りにとって良い季節ではない。
僕自身をふりかえってみても、いよいよそれは確かなことのように思えてくる……
北海道は忠類川へ、チャムサーモンとカラフトマスに出会う旅に出かけました。
晩夏は必ずしも釣りにとって良い季節ではない。
僕自身をふりかえってみても、いよいよそれは確かなことのように思えてくる。
けれども、釣りにまつわる想いで、それもビタースイートな記憶、時を経ても心に焼き付く一枚の写真のような釣りは、圧倒的に夏の釣りである。
僕は夏の釣りが大好きだ。そうなったのは、夏とは正反対の真冬に生まれ、夏に憧れているせいかもしれない。
憧れて、手を伸ばしても、思い描いたような夏の釣りはまだ出来ていないのだ。
9月初旬の忠類川とて、この晩夏の法則の例外ではなかった。
ベストシーズンではなく、悩ましくも中途半端な季節である。
中途半端というのは、カラフトマスとチャムサーモンどちらも狙えるが、どちらも最盛期ではないということ。
遡上魚狙いの宿命だが、魚は川に登っていなければ釣れない。一方で、登っていも釣れるとは限らない。そこが難しい。
忠類(ちゅうるい)とはアイヌのコトバで「暴れ狂う、激しい流れ」を意味するらしい。
今回の旅では、多くの人に出会って、沢山の人からその話をされた。
言葉の通り、忠類川の流れは見た目以上に押しが強い。その中を潜り登ってくる魚達だから、強いのもうなづける。
元祖リバー・サーモンの川、忠類川。今年で21年目を迎える。
長い歴史の中で、多くのドラマがここで生まれた。その釣り場に立つこと自体が嬉しかった。
忠類川の管理棟で事前登録のカードを見せ、今日の調査代金を払う。
ここ忠類では、アングラーは皆、調査員だ。調査の名目で釣りをさせてもらう。
通称”サケチャリ”はフリー&シェアライドの自転車だ。乗り降り自由で、広い流域を巡るのに最適だ。
朝一番は下流域から少し登ったポイントに入った。
9月初旬は、魚の遡上事情からいえば難しい時期といえる。
カラフトマスは8月初旬から遡上をはじめ、チャム・サーモンの遡上は9月後半にピークを迎える。
前者から言えば遅く、後者から見ると早い。
ただ事前情報から察するに、チャムが遡上を始めたことはわかっていた。数は少ないが可能性はある。
ゆえに川の上流、中流ではなく、下流にアングラーが集中していた。
「人溢れた一級ポイントより、人のいない三級ポイント」。僕の釣りの信条でもある。
早朝のプライムタイムが過ぎて、日が昇り始めた頃。
今回の旅、はじめてのバイトがあった。16ldのナイロンラインをセットしたリールがドラグを鳴らし、簡単にラインがどんどん出される。
自分のタックルはこんなにも軟弱だっただろうか。そんな錯覚をしてしまう。
引きの強さからチャムと確信した。ロッドはシマノの名竿、モンスターリミテッドの80DL。美しい弧を見せてくれた。
10分程度かけて岸辺にソフトランディング。
水揚げしたのは、チャムの70cm後半だった。まだブナが入り始めて間もない、フレッシュランのチャムだ。
単なる銀ピカではなく、銀ながらもブナの入り始めた個体が釣りたかった。水流に魚を任せて、しばし見とれる。
ここ忠類では、チャムを”川のライオン”と呼ぶ。カラフトは川の狼とすれば、たしかにチャムの荒々しい引きはライオンというに相応しい。
サケは不思議な生き物だ。
忠類川では下流部域に孵化場所がある。そこで放たれた個体は孵化場までしか登らず、それ以上は遡上しないらしい。
不思議な話であり、不可思議な事実であった。骨の記憶とでも言うのだろうか。
使用したルアーは90mmのシンキングミノー。
チャム狙いで主に使うのはスプーンである。スプーンでボトムを集中的に狙う。
今回はスプーンでも釣ったが、本流トラウトでよく使うミノーを試してみた。
サーモンのミノー攻略に関してはまだまだ未知数の部分がある。
今回は色々試した。そして、トラウトルアーの師から教わっていたことも加味すると、一つの確信めいたメソッドが見えてきた。
この日、計5匹のチャムを釣る。そのうち4匹、それもフレッシュランは、すべてミノーの同じ流し方であった。
チャムサーモンのミノーイングでは、魚にルアーを見せすぎないことを最優先に考えるべきだ。
ダウンでゆっくりとルアーを見せる釣りならば、スプーンに歩がある。
ミノーでは、ダウンよりもアップキャスト、遅い動きよりも思い切った速さで操作したほうが反応がよかった。
(注:ミノーはシングルフック1本がレギュレーション。)
昼食のチキンのサンドイッチと卵焼きを食べて、午後からはすこしだけ川を登った。
カラフトマスをより集中的に狙うためだ。
草木は夏というより秋の色で、空は雲一つない青であった。
フレッシュランのカラフトマスが来てくれた。どこかシートラウトに似ている。
カラフトマスはチャム・サーモンに比べると小さいから”マス”と呼ばれているが、本当はサーモン(ピンクサーモン)である。
事実、カラフトマスの引きは同種の他のトラウトと比べても勝るとも劣らず。重厚感のある引きで楽しませてくれる。
そのチャムサーモンとピンクサーモンの釣り分けについてだが、故西山徹氏が面白い記述をしている。
両者のサーモンを比較してみると、流れに強いのはチャムサーモンである。同時に遡上してくる場合には、チャムサーモンは流芯を、ピンクサーモンは流れの脇を通ってくるので注意がいる。というのも、ピンクサーモンは多少の濁りがあっても魚影が見える。ところがチャムサーモンは、水が澄んでいても、なかなか姿が見えない。しかもチャムサーモンは、人の気配に対してとても敏感ときている。(フライフィッシングメソッドNEW100より)
西山氏の言葉はまさにその通りであった。
チャムはより流芯、流芯を流してやらないと釣れない。
一方でピンク(カラフトマス)は、足元、対岸、ボサ下などシャローでも勇猛果敢にバイトしてきた。
さらにカラフトマスを追加してゆく。
チャムに比べても、カラフトのミノーへの反応はすこぶる良い。
必ずしもボトムへルアーを送り込まずとも、シャローレンジでのフォール中、それから表層のリトリーブでもフレッシュランの個体が食べてきた。
西山氏の言う通り、ある程度の釣り分けは可能だ。この日は70cmに迫るであろうカラフトも2匹キャッチできた。
夕マヅメ。
幾つかのポイントを見て回り、あらかじめ絞り込んでおいたランに入る。
シンキングミノーのジャーキング、ドスンッ。重いバイト。
間隔を置いて、2度、大きくゆっくる合わせを入れる。
しかし、魚は巧みに流芯へ移動し、流れに乗って一気に下流へと下ってゆく。
16ldラインが一気に30mは出された。
そこからが大変だった。まず岸にはなかなか寄せられない。寄ってきてもまた流芯に引き返そうとする。
この繰り返しで、10分以上を費やした。
キャッチしたのは、80cmに迫るチャム・サーモン。
トリッキーなミノーイング、強いジャークでの喰わせ、満足の一匹。
フッキングが危なかった。おそらくはミノーのボディ前方にバイトし、リアフックで口側面に掛かったのだろう。
いつフックアウトしてもおかしくないカカリであった。ナイロンライン+強くも曲がるロッドの組み合わせが功を奏した。
力強い尾びれ、綺麗で荒々しい鰭。
厳つい面構え。同じ厳つさで言ってもサクラマスよりも野性的な印象を受ける。
このチャムサーモンは、淡水に触れてまだブナが出始めて間もない、綺麗な魚体であった。
敬意の念を込めて、リリースする。
一匹を釣り上げるまでドラマがあって、それは心地よい余韻であり、想い出となる。
1日でキャッチできたチャムは5匹。
もう十分だった。けれどもたまにはこんな日もイイ。
サーモンを釣ると話した時、「なぜ海に行かないのか」と言われた。
北海道まで来て川でサーモンを釣るのは、たしかに遠回りかもしれない。
人との無碍な争いなしに、平和に釣りができるサーモンフィールドは北海道でもまだ少ない。
けれども、なにより僕は、やはり川の釣りが大好きなのだと思う。
川の流れを登るとき、アングラーは何を考えるのだろう。
トラウトという寡黙な生命に魅せられ、めぐる流水の奥深くへと、1尾を求める。
それは希望のようにも思える。けれども、あてどない夢のようでもある。
川に立つとき、どこか懐かしさにも似た感覚を抱く。
いつも脳裏をかすめるのは、幻の記憶。
遥か昔。この流れで、夕闇訪れるまで夢中で友と釣りをしたかのような幻の記憶にいざなわれ、また川を登る。
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