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深山幽谷の川へ、イワナ。 

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夏のはじまりに、源流へ出かけた。
車をほっぽり出して、山を登って、ゆっくりと流れに入る。
そこには奥深く静かな谷と複雑に入り組んだ水の回廊が広がっていた。


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界隈には鬱蒼とした森が広がっている。流れには大鑑のような残雪。
この凛冽たる残雪が生み出す寒気は一体を覆い、この気候風土が冬から春にかけてヒトを拒んできたことを思わせる。
そうやって、この流れはただ無垢であり続けているけれども、通い慣れた僕にとっても、川は険しい表情を見せる。

 

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山の流れを穿つような残雪は、釣り人の行く手を阻み、邪悪な印象すら抱かせる。
圧倒的だけれども近寄ってはいけない大きな雪の塊を横目に。恐る恐る川の浅瀬を渡る。

 

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流れは滾々と大地から湧き出ているみたいだ。水は冷たく、まだ10℃に至っていない。
水面の虫への反応は無く、潔くあきらめきれない僕は、素直に水の中をルアーで探る。
同行者は既に何匹かを手にしているようだ。

 

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段々に重なる流れは、どこか神秘的にも思える。
その流れを登ることで、ヒトは自然の一部として時を生きていることを自覚する。それはなにか新しいことに遭遇した時の感覚に似ている。

雲が風と水と虚空と光と核の塵とでなりたつときに
風も水も地殻もまたわたくしもそれとひとしく組成され
じつにわたくしは水や風やそれらの核の一部分で
それをわたくしが感ずることは
水や光や風ぜんたいがわたくしなのだ  ―宮沢賢治 『春と修羅』

 

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登りついた先にあるのは大きな滝壺。
森の薄暗い光に照らされて幻想的に輝く水の流れは、これ以上人が昇るのを拒んでいるようにも思える。
この溝には大物が潜んでいるかもしれないが、止水は沈黙を続けた。
むしろ魚は険しい流れにいた。

 

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静寂に包まれた凛冽な冬が終わり、融雪増水した川に濁音が響く流れで、大イワナはキレイに目の前でルアーをかっさらっていく。
けれども、水の中で長い時を生き抜いてきた老獪な魚にしては、いささか大胆すぎる。何かが魚を狂わせたのだろうか。
水底に住まい、フライでも、エサでも、ルアーでも到達デキなかった深みから、流れの主が出てきてくれたのだ。
野性的な黒に染まった体色は、この流れで生きる地のイワナを思わせる。40センチに至るか至らないかの大イワナ。

 

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50mmマクロレンズで撮影した大イワナは、美しい野性を見せてくれた。
おそらく僕がこれまで出会ったイワナの中でも、もっとも想い出に残る一匹だろう。

なかなか釣りに行けないからこそ、一期一会がとても貴重に思えてくる。
今年の夏の間に、また行けるだろうか。次はドライフライに出てきてくれるだろうか。

 

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