- 2019-06-02 (日) 0:53
- Fishing
北海道を巡る旅、3つ目の湖は屈斜路湖。
屈斜路は、クッチャラ(kutcar)という、湖の喉口を意味するアイヌ語に由来する。
実はこの湖、過去に何度か訪れているが、苦手意識が拭えないでいた。
阿寒を後にして、山を一つ越えて屈斜路湖を目指した。
途中、弟子屈の町に立ち寄り、釣具屋を探した。
実は、マズイ事情がひとつあったのだ。
阿寒湖での釣りの途中、ランディングネットを背中に固定する、マグネットリリーサーが壊れてしまったのだ。
回遊待ちではなく、歩くことを釣りのスタイルにしている僕にとって、これはかなり痛手だ。
「MARO」
Google検索で見つけた、弟子屈の釣具屋さんだ。この名前。どこか聞き覚えがあるというか、懐かしい。
その懐かしさの正体に気づくまでに、時間はかからなかった。
中学生の夏、欲しくてたまらないルアーがあって。その名前が”マロゼミ”だった。
そんなことを頭の片隅で考えながら、お店を探す。
ナビにしたがってついたお店は、なんというか一軒家だった。
MARO Lure Factory。玄関に金属プレートがかかっている、お店は、この家に間違いない。
呼び鈴を押して、しばらく待つと、家の中で足音が聞こえて、ゆっくりと扉が空いた。
「はいはい…どちらさんかな・・・」
「あ、ごめんください、お店やってますか??」
「もちろん、やってるよ。旅の人?何か欲しいものでもあるの?」
壊れた木製のマグネットリリーサーを見せて説明する。
「あぁ、これ直せないかな?もったいないよ」
そういって壁にかけてあった工具から大きなプライヤーシーズを持ち出して色々と試してくれる。
部屋には大型ダクト、その横にはハンドメイドで作業途中のルアーが飾ってある。
そして、ご主人の顔を見て、僕は確信した。
「あの、失礼ですが、お店のMAROですが、もしかして、あの麻呂ルアーの南さんですか?」
そう。このご主人こそ、ルアービルダーとして有名な、南さんご本人だったのだ。
幼い頃にマロのルアーが欲しくて、それでも買えなかったこと。特にマロゼミの造形美に魅かれたこと。そんな話をたくさんした。
北海道のトラウトのこと、湖の釣りのこと、熊をナメてはいけないこと。気がつけば3時間ちかくも話し込んでいた。
僕は、トラウトの釣りにかかわらず、こうした玄人や釣り哲学を持つ人に、これまでも沢山学んできたと思う。
こうした知見は、確実に僕の釣りの糧になっている。雑誌やSNSではない、生きた情報だ。
マグネットリリーサーを取り替えてもらい、弟子屈を出発したのは16時過ぎ。
屈斜路湖に着いたのは、ちょうど午後5時頃だった。
今回の旅では、自分のチカラで魚を探して、自分のチカラで釣る。これがテーマだった。
だから、魚が居ることが明白で、人の集まるインレットを出来るだけ避けて釣りをしたいと思っていた。
屈斜路湖でも確かに南のインレットは一級ポイントなのだけど、毎回同じ釣りでは面白味にかける。
夕刻に入ったエリアは、南からはかけ離れた道路沿いの浜だった。
このエリア、あらかじめ地図で調べて、その地形変化から良さそうと睨んでいた。
既に、地元のアングラーが立ちこんでおり、期待が高まる。
しばらくキャストを繰り返して、わずかなアタリに合わせた。
屈斜路湖の一匹目は、40センチ程度のアメマスだった。
サイズではない、自分で探したエリア、自分で釣った魚、これがなによりもうれしかった。
釣り場からあがると、地元のアングラーとしばしお話させていただいた。
長期休暇で休みをとって、北海道をまわっている。
そう言うと、羨ましがられると同時に、あの湖はいい、あの川はデカい魚がいる、と教えていただいた。
今回の旅では、ありがたくもこうして沢山の人から、沢山の情報をいただいた。
その一つひとつを訪れながら、朝から晩まで湖をまわったものだから、時間がどれだけあっても足りない。
今回まわりきれなかったフィールドには、また次の機会に訪れたいと思う。
この日は、川湯温泉に泊まることにした。
湖から通じる薄暗い道は、それでも満月キレイで、こんなちょっとした自然風景に北海道はスゴイと思ってしまう。
翌朝、少し寝坊をしてから、屈斜路湖に向かった。
湖についた時にはすでにたくさんのアングラーがキャストを繰り返していた。
それでも、あまり釣れていない。
湖に目を凝らすと、水面にワカサギがあぶれていて、トラウトはたまにライズをしては、ワカサギを食べている。
それでもルアーにもフライにも食べてこない、何かの要素がマッチしていないのだ。
マッチザベイトかリアクション。魚に疑似餌を食わせる時、大きく分けて2つの考え方がある。
マッチザベイトは既に此処にいるアングラーが試しているが、それはワカサギの見た目に近いという意味でのマッチだ。
見た目ではなく、動きでマッチさせることを考えて、バルサ製のフワフワとした動きを演出した。
結果は意外にも早くでた。50センチ程度だが、綺麗なニジマス。
ワカサギを沢山食べており、コンディションは最高だ。
綺麗な水、綺麗な魚。それだけで満足だ。
こちらは顔のアップ写真。
魚の目に映る世界を切り取る。
奥の深い黒い瞳のまわりに、金環がふちどりされいて、なんとも美しい。
こういったマクロレンズを使った写真は、現像してみて、現場ではなかった驚きに満ちている。
すっかり日が昇って、状況としては厳しくなってしまった。
でもまだ、ここからチャンスがある。人が少なくなった分だけプレッシャーは遠のいたのだから。
と、思っていた矢先。
バルサ製のフローティングミノーにコーリングアップされて飛び出たアメマス。
サイズは60センチアップ、ワカサギをたらふくたべており、なんとも獰猛な顔つきだ。
阿寒湖のアメマスがどこか上品だったのに比べて、こちらは野性味あふれている。
また、このアメマスは、背中の模様が非常に印象的だった。
地元のアングラーに言われて気が付いた。ドーナツ模様というのはアメマスの斑点がドーナツみたいに空洞になっている状態をいう。
海にくだって、急成長した個体にこういったドーナツ模様が現れるのだという。自然というのは不思議だ。
この日は風が強く、屈斜路湖周辺には注意報が出ていた。
風速は7メートル前後、ルアーであればなんとかキャストが出来るくらいだ。
畑からの土煙が視界が遮られ、自動車事故がおこったのだと、ラジオのニュースが伝えている。
あまりムリをしないで、休憩をとりながらポイントを見て回る。
単発だけれども、昨日の夕方につれたポイントに入ってみる。
まだ日中だけれども、風波があるので、もしかすると…と思ったのだ。
予想はあたり、何度かフッキング出来ないあたりの後に、やっと乗った。
蛇のようなアメマス、70センチを超えているが、痩せており、獰猛さが残されている。
このエリアには湧水があって、それに魚がまわってくるのだろう。
午後からは車で林道に入る。
昼と言えでも、森の中は薄暗い。車でクラクションを鳴らしながら進み、無理のない範囲でロッドを降る。
熊がでてきたときのために、車のカギはあけっぱなしだ。あまり奥には入り込まない。
ただ今回に関しては、この林道側の湖のコンディションはあまりよい感じではなかった。
地元の玄人からは、林道に入る際、熊への対処について、よくよく話を聞いていた。
この地をよく知る玄人ほど、林道には入りたがらない。
「どんなにデカい魚がいても、あそこは嫌だ。」そういう話をたくさん聞いていた。
逆に、自転車や徒歩で林道に入るのは地元以外のアングラーが多い。
この地を訪れる遠征者がいたら、注意されることを願う。
屈斜路湖の最終日は、朝から湖南に入った。
風がいい具合にあたり、これにつられて魚の活性もあがっていると読んでいた。
ただ、風速9メートルの向かい風は、釣りには少しつらかった。雨は横殴り。
まだ暗い時間から張り付いてアングラーに話を聞くも、夜が明けてからは魚の反応がないという。
そんな時には、コンフィデンスを持って投げられるルアーを選ぶ。
バルサ製のブラウニー11cm。
見た目ではなく、動きがワカサギライクで、他のアングラーに差を付けられる1本だ。
2投目で結果は出た。産卵から回復したばかりのオスのレインボートラウト。
振り返ってみれば、苦手意識のあった屈斜路湖で、これまでにない戦果をあげていた。
全てがバルサ製ミノーの釣果であった。
今回、北海道遠征ではロッド5本を持ち込んでいた。
色々な湖と川を巡るから、装備がどうしても増えてしまう。
屈斜路湖でつかったのは8.6フィート、ランディングネットはストリームビューの70cmを使用。
内径が50㎝なので、ニジマスやアメマスにはちょうどいいサイズだ。
釣れた魚の余韻にひたりながら、屈斜路湖を後にした。
美笛峠には霧がかかり、山上から湖を見渡すこともできなかった。
美笛、緋牛内、端野を通って軽呂地へ出て、朱鞠内への中間地点、紋別を目指す。
峠を越えると雨と霧はやみ、白樺の景色が目立ってくる。
初夏の北海道は、緑が芽吹きはじめて、景色を見ているだけで楽しい。
紋別に着いたのは夕方前。
時間があったので、渚滑川の上流を目指して滝ノ上へ行く。
この街に入った途端、空を覆うくらいにたくさんの、白の綿毛が飛んできた。
タンポポだ。人も少なく、空き家も目立つちょっと寂しげな雰囲気の村に、たくさんのタンポポの綿毛。
その風景がとても印象的だった。
あいにく渓流は早すぎたのか、魚の陰すら見ることが出来なかった。
ただ、ここ数日の気温上昇で虫が増え、ブユの猛攻にあって、早々に退散した。
紋別にはじめて来た。
海沿いの小さな街で、なぜか僕は実家の海街を思い出した。
漁港の船には、大漁を祈願する旗がなびいている。
ここの観光ホテルで1泊して、翌日に朱鞠内を目指す。いよいよ次はイトウだ。
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